カナダという国が建国されてから156年、世界的に見ても歴史の浅いこの国が誇る文化が多文化主義です。
事実、カナダには訳250ヵ国以上ものエスニック集団が暮らし、移民や難民が国の人口の約25%を占めています。
今回の記事では私がそんなカナダの学生生活を通じて学んだ、カナダの多文化主義社会の歴史、利点、そして課題について話そうと思います。
グローバル化が進み多様な背景を持つ人と接する機会が日本でも増えていると思うので、カナダに来る予定のない人も是非読んでみてください!
Contents
カナダにおける多文化主義の歴史と影響

多文化主義とは何か?
そもそも多文化主義とは何なのでしょうか?
多文化主義とは一つの国において多様な文化における文化的差異を認め、尊重し、共に平和に暮らしていける社会を目指す考え方のことです。
つまり、色々な人種の人々が一緒に平和的に暮らしていけるようにしようということです。
ここで注意すべきなのはマルチカルチャリズムとインターカルチャリズムの違いです。
マルチカルチャリズムは異なる文化における文化的差異に注目し、それらに対して寛容になるという考え方です。
対して、インターカルチャリズムは異なる文化の間にある共通点に注目し、それらを通して調和する社会を目指すといった考え方です。
インターカルチャリズムは多文化主義から派生した考え方の一つで、間文化主義と呼ばれています。
カナダにおけるマルチカルチャリズムの歴史背景と政策
カナダのマルチカルチャリズムの全ては1968年にピエール・トルドーが総理大臣に就任するところから始まります。彼がカナダの多文化主義のパイオニアです。
カナダでは英語話者のほかにフランス語話者がケベック州を中心に多く住んでおり、その頃は二言語・二文化政策というフランス系国民の文化を尊重する政策が取られていました。
しかし、カナダに住んでいた多くはフランス語話者だけではなく移民の中国系やインド系の国民も多くおり、移民が増えていたため二文化政策では国の状況にそぐわないとし、二言語・多文化主義政策を採用しました。
この多文化主義政策の具体的な内容は主に異文化間の不平等をどのように無くしていくかに重点がおかれ、今でも議論されています。
多文化主義が与える市民への影響
では多文化主義が私たちに与える影響はどのようなものなのでしょうか?

私が身近で感じた多文化主義が個人へ与える影響は個人のアイデンティティーの形成です。
多くのエスニック集団が混在するカナダでは、個人のアイデンティティーも必然的に複雑化します。

両親と祖父母ともに中国人ですが、カナダ生まれカナダ育ちです。私は自分のことをカナディアンだと思っています。

フィリピン人の母とヨーロッパ系(混血)の父を持っています。人生の半分をシンガポール、もう半分をカナダで過ごしています。国籍はカナダにありますが、自分が何人かと言われると答えられません。
複雑ですね。。。
私の場合は、日本人学校に通い、日本人向けの教会に行き、家でも日本語を話していたので、日本人としてのアイデンティティーを変わらず持ち続けることが出来ました。
このように、多文化主義社会で暮らしていく私たちは複雑なアイデンティティーを持つ中で自分は何者かということが問われます。
多文化主義社会で自分のアイデンティティーを確立し暮らしていくのは難しく、時間がかかります。
多文化主義社会の利点

移民による人口の維持と経済発達
冒頭でも書いた通り、移民はカナダ人口の約25%を占めています。また、現在のカナダの労働者の75%は移民であり、カナダ経済の大部分を支えています。
他にも海外からの若い労働者を受け入れることによって少子高齢化の対策を行ったり、研究者や医療従事者を受け入れ国の発展を促進させています。
大人だけでなく、カナダに来る留学生はおよそ210億ドルほどカナダの経済に貢献していることがわかっています。

カナダにとってどれほど移民が大切かが伝わってきますね。
身近になる多様性
カナダのような多文化主義社会の上に成り立っている国に暮らしていると、必然的に異文化は身近になって行きます。
多くの人種やエスニック集団が混在しているため、日々違った価値観や習慣に触れることができるからです。
これによって様々な価値観にオープンになり、異文化をより深く理解することにも繋がります。
また、多様性が当たり前化することで差別が減っていきます。
日本で日本人以外の人がいるとすぐに「外国人」というレッテルを貼られてしまうことは多いと思います。
立派な差別ですね。見た目が日本人でないだけで、実は日本生まれ日本育ちかも知れないからです。
一方カナダでは相手を見た目だけで判断せず、まずは対話を通じて相手が何者でどのような価値観を持っている人なのかを見極める習慣があるので、このようなことは起こりにくいです。
多文化主義によって多様性が身近になり、より深く異文化を理解することができ、結果差別を減らしていくことにつながるのです。
移民や難民が暮らしやすい社会
マルチカルチャリズム自体が文化の国なので当たり前かもしれませんが、カナダは移民や難民が暮らしやすい社会です。
それぞれの文化に特化したコミュニティーが存在し、誰でも所属感が得られるのがその大きな理由です。
それぞれ国の人が運営する飲食店などのお店も多々存在し、同じ国から来た人たちをサポートする企業団体もあります。
また、国からの難民の方々の支援は手厚いです。

私がカナダに来て間もないころはESL(Enlgish Second Language)という英語が母国語でない人のためのクラスで自分のレベルにあったクラスを受けていました。
このように、移民や難民など、国に新しい人に対して良心的な制度や教育体制が敷かれています。
構造的な多文化主義の限界と課題

とは言えそんなカナダの多文化主義社会にも改善すべき点はたくさんあります
そこで、これから多文化主義がどうなっていくのか、どのような変化が必要なのかを考えてみました。
多文化主義の構造の限界
まずは、多文化主義の構造の限界についてです。
始めに問題になるのが公共空間の場に置いて、様々な文化間での中立性が保たれる必要があることです。
カナダのケベック州ではセキュラリズムを推進するため政府によって運営されたサービスで働く人、受ける人はヒジャブをかぶってはいけないというポリシーが設定されました。
これだけでも大問題なのですが、それをさらに肥大化させたのが十字架というシンボルです。
セキュラリズムを推進するため宗教的シンボルを取り除く政策を行うのであれば、必然的にキリスト教のシンボルである十字架も取り除くべきです。
しかしキリスト教はケベックの歴史とあまりにも深い関わりを持っており、そう簡単に除外できないのです。
結果様々な宗教間での中立性を保てず、国中から批判の声を浴びる結果となりました。

説明しよう!
セキュラリズムは世俗主義、教分離主義のことです。簡単に言うと政府の運営と宗教は分離するようにしよう!という考え方です。
そして、ヒジャブはイスラム教の女の人が頭に巻くスカーフのようなもののことです。
あくまでも多文化主義を唱えるのであれば、政府の中枢に様々なアイデンティティーを持った人を積極的に取り入れ、異文化間での対話を可能にする必要があるのです。
誰がどのように異文化間での対話を可能にし、どのように均衡が保たれることを保証するのかを構造化し、はっきりとさせない限り多文化主義は構造としてまず成り立つことができません。
個人が持つ寛容性の必要性
多文化主義社会を可能にするうえで個人が持つ異文化への寛容性は前提条件として求められます。
多文化主義社会における寛容性とは、文化的差異を認め、差別せず尊重するということです。
しかし、根本的な価値観に基づくマナーや暮らしの在り方が対立することもある中、異文化の人々に寛容になるのは難しいことです。

一見異文化を受け入れているように見えていても、ただただ無視しているだけの場合が多いのが現状だと私は思っています。
私自身これを経験しています。
私はキリスト教徒なのですが、ムスリム(イスラム教徒)の友達がいます。仲もよく気も合うのですが、宗教が違うため相反する価値観を持っていることは否めません。
それでも私がその子と仲良くできるのは、私がその部分から目を背けているだけではないのではないかと思うのです。
異文化に寛容になることは本当に相手の文化に深く干渉しないということなのでしょうか?
多文化主義における寛容性はカナダに住む人でもほとんどが出来ていないことであり、非常に難しいことなのです。
全ての日本人に知ってほしい、カナダのマルチカルチャリズムについてまとめ

カナダにおける多文化主義の歴史と影響
- 1960年代後半から多文化主義が進んできた歴史がある
- 多文化主義社会でのアイデンティティーの形成は複雑
多文化主義の利点
- 移民がカナダ人口と経済を支えてきた
- 多様性が身近になり差別が減る
- 移民や難民が暮らしやすい社会が実現する
構造的な多文化主義の限界と課題
- 公共の場での文化間の中立性を完全に保つのは不可能
- 多文化主義は寛容性を前提とするが、異文化に寛容になることは難しい
どうでしたでしょうか?
少し難しいトピックでしたが、カナダにおける多文化主義社会の実態が少しでも伝わればと思います。
多文化主義の利点は多くありますが、まだまだ課題が多いのも事実です。
これからカナダがどう変わっていくかが楽しみですね。
ちなみに、使っているデータ全てカナダ政府のサイトから提供されています。
週に一度の投稿を目指しているので、ぜひ読んでみてください!
著者 プロフィール
私、アボカドは小学校2年生の頃カナダのトロントに移住してきて現在高校2年生です。カナダの現地校と日本語補習校を両立しながら勉強しています。
このブログでは、
「包み隠さずリアルを届ける、カナダ在住の高校生の本音。」
をコンセプトに私がカナダで経験したことを元に考えたことや思ったことを正直に伝えます。
子供としてカナダで育ってきたからこそ提供できるオリジナルな視点で情報をお届けします!

もしご質問や記事にしてほしい内容などがありましたら、ぜひコメントください!
筆者の経験したことのある内容であれば、出来る限り記事にします!















1981年 カナダの権利と自由の憲章
これはカナダの憲法の一つであり、カナダに住む全ての国民に法の下、平等な権利を保証する目的で作られました。
基本的人権、集会の自由、宗教の自由、表現の自由などを保証するものです。
1982年 アファーマティブ・アクション
アファーマティブ・アクションは性別や人種などによって社会的に差別されている人々への救済措置を意味しています。
差別やそれによる不平等を解消する目的で取り入れられ、具体的には平等な雇用機会や賃金などの項目があります。